実家にて。
すでに2週間以上が経過した。
危篤状態がつづいている。
痛みを感じないために全身麻酔を投与され続けている。
考えること,考えるべきことはたくさんあった。そして今もたくさんある。ありすぎる。
なのに,何を書けばいいのか,書きたいのか何も頭に浮かばない。
まあ,つれづれに書いてみようと思う。
時間だけが過ぎていく。
今のこの期間が,どのような記憶として私に残るんだろう。
何を思い出すのかなあー。
すでにそんなことを考えるまでになった。
つまり,必要以上の感傷にひたることはなくなった,ということだろう。
「うちに帰りたい」と祖母が父にいっている夢をみた。
はっきりした夢ではなかったけれど,そう言っていたと思う。
その直後,祖母と父が混ざり合って,私は起きた。
起きてすぐ,ビックリするほど大きなラップ音がなった。
正直,とても怖くなった。
実体じゃない祖母が私に訴えたのだと思った。
祖母は亡くなったのかもしれない,とも思った。
両親を起こそうとしたが,やめておいた。
次の日,祖母は相変わらずの状態だった。
祖母の夢をみたのは,初めてだった。
どんなに祖母のことが頭にあっても,夢には一度もでてこなかったのに。
なんで祖母はあんな夢を私に見せたんだろう。
見せたのかな?
ふーむ。
勝手に私が見たのかもしれないけど,分からない。
祖母は家に帰りたいのだろうか。
いや,帰りたいには違いない。
でも,どうやって帰りたいんだろう。
正確に言えば,どのような状態で,帰りたいのだろうか。
祖母は何を考えているのだろうか。
だれもが,家族も親戚も医者も看護士も,だれもがはっきりした意志をもつこともなく,
なんとなく,なにげなく,祖母のその時を待っている。
そんな状況な気がする。
それでいいのかなあ,おばあちゃん。
もう私には分からないよ。ごめんね。
祖母はもう,話すことができない。
私達はもう,祖母と一つの会話すらもつことができない。
物理的にそういう状況におかれてしまった。
それだけが。
胸が詰まるほど苦しい。